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SAP HANA のリモートデータシンク機能は、SAP HANA SPS10 に実装された全く新しいオプションです。そしてこれは同時に、市場に登場して10年以上経つ成熟したテクノロジーでもあります。
このブログ記事では、これで何ができるのか、3つの主な利用例を使用して概要を説明するとともに、使用方法についても少し説明します。
SAP HANA remote data sync をタイプするのはたいへんなので、以降は、RDSyncとします。
では、はじめましょう。
What it does - これは何をするのか
RDSync のポイントは、技術的には、SAP HANA と多くのリモートデータベースの間のデータを同期できるということです。
この文のそれぞれのパートが何を意味するか、みてみましょう。
まず最初にデータ同期についてです。
データレプリケーションとは、2つまたはそれ以上のデータベースにデータをコピーし、それぞれがデータの最新コピーを持つことです。
データ同期とは、レプリケーションの中のある特定の形で、ハイレイテンシーまたは断続的なネットワーク越しにデータをレプリケーションするために作られたものです。これは、セッションベースです。それぞれのリモートデータベースが同期セッションをスタートすると、リモートのサイトで行われた変更を SAP HANA へアップロードし、HANA で行われた変更をリモートのサイトにダウンロードします。そこで、セッションが完了します。
多くの場合、リモートのデータベースは SAP HANA の全てのデータ、あるいは同じレイアウウトを必要することはありません。そのため、RDSync は、SAP HANA とリモートデータベース間でデータが移動する際にデータをサブセットし、変換する方法を提供します。
次に、SAP HANA についてです。
RDSyncは、SAP SQL Anywhere の Mobile Link (日本以外は MobiLink。日本は登録商標の関係で Mobile Linkを使用しています) と呼ばれる同期テクノロジーを使用しています。しかし、RDSync は、Mobile Link 同期サーバーがHANA プラットフォームに統合されているため、サーバーを管理しなければならない IT スタッフにとって多くのメリットがあります。
3番目に、「多くのリモートデータベース」についてです。
リモートのサイトにあるデータベースは、Windows、Linux、あるいはその他のOS 上で稼働するリッチなクライアント/サーバー型データベースである SAP SQL Anywhere データベースか、または、iOS や Android などのモバイルの OS のアプリケーションにビルトインできるコンパクトなデータベースライブラリーである SQL Anywhere の Ultra Light (日本以外は UltraLite。日本は登録商標の関係で Ultra Lightを使用しています)の両方が可能です。
すでに、SQL Anywhere の Mobile Link は、それぞれが何百ものテーブルを持つ、何千ものリモートデータベースとの利用実績があります。これらの複雑で、大規模な展開されたデータベースを処理するスケーラビリティー、パフォーマンス、そして正確性が、RDSync の役割のキーとなる部分です。
この説明から、 RDSync は、SAP HANA のデータプロビジョニングテクノロジー --- SAP HANA と他のアプリケーションやデータストアの間でデータを移動するソフトウェア --- に加わったものであることを理解していただけるでしょう。
下の図で、右側のテクノロジーは、SAP HANA と他のエンタープライズデータストア間のデータ移動テクノロジーです。右上から順に、他のリレーショナルデータベースとのリアルタイムのデータレプリケーション (SAP Replication Server)、複雑でハイパフォーマンスな抽出、変換、ロードのオペレーション(SAP Data Services)、そして Business Suite とのデータ交換テクノロジー(SAP Landscape Transformation)です。
左側のテクノロジーもまた、SAP HANA と外部のデータソースとデータ交換が可能です。こちらはパブリックのネットワーク越しに利用されることが多いものです。SAP Smart Data Streaming は、複数のソースからデータを高速で収集する方法を提供するもので、RDSync はリモートサイトに構造データの必要性がある場合に、より役にたちます。
What it is for - これは何のためのものか
私たちもよく聞くように、コンピューティングの世界のメインストリームは、中央に集中させたクラウドコンピューティングのアーキテクチャの方向に向かっています。クラウドでは、全てのデータは、インターネット越しにアクセスされます。
お分かりになるとおり、RDSync は、異なるパラダイム、つまりデータは中央だけではなくネットワークのエッジにも格納するというパラダイム向けに作られたものです。
クラウドがメインストリームである中、なぜこのようなテクノロジーを使用するのでしょうか?
RDSync には、このクラウドコンピューティングの時代でも、分散されたデータモデルが未だ役割を果たすことを示す共通の3つの利用例があります。
順番に説明しましょう。
1つめは、「サテライトサーバー」と呼んでいるものです。許容できる方法でエンタープライズシステムを利用することができない状況にも関わらず、行わなければならない業務があるリモートのワークプレースでの使用です。
2つめは、モバイルアプリケーションのカテゴリーの1つで、従業員の一日の業務全体に影響し、生産性のキーとなるモバイルアプリケーションでの使用です。
3つめは、おそらく現在最も重要視されている、モノのインターネット(Internet of Things : IoT)のアプリケーションのセットです。シンプルなデータ取得でも十分なものもありますが、IoTのアプリケーションでは、エッジにおいて大量の構造データ、そしてそのコンピューター処理が必要となります。
それぞれについてみてみましょう。
サテライトサーバーとしての利用例
サテライトサーバーとは、重要な業務プロセスが発生し、ネットワークに接続していない場合でも処理を行わなければならないリモートのワークプレースのサーバーのことです。極端な例をあげると、油田のプラットフォームがあります。 この最も隔離されたワークプレースにおいて SAP アプリケーションの機能を利用する方法として Transaction Availability for Remote Sites (TARS)と呼ばれる RCS (Repeatable Customer Solution) をSAPは提供しています。
油田プラットフォームは、技術的にはたいへん整ったワークプレースですが、油田プラットフォームとエンタープライズの基幹システム間のネットワーク接続は、satelite link (高レイテンシ) であるため、頻繁にネットワークが切断され、新しいサイトに移動する最中は特に切れやすくなります。しかしながら、作業員の共同作業であるメンテナンス作業は継続して行わなければなりません。実際、油田プラットフォームが移動している時に最も多く行われます(そのため実際のドリリング作業はあまり行われません)。
TARSのソリューションは、RDSync と Mobile Link のテクノロジー上で構築されています。そしてUI5 の Webアプリケーションを通して ローカルの SQL Anywhere サーバーを使用することで、SAP のトランザクションをいつでも実行できます。これは、SAP のビジネスプロセスを新しい領域に拡張するものです。
TARS のソリューションのその他の利用先としては、小売店舗 (店舗内にストアサーバーを置くことで店舗の業務が止まることがなくなります)、鉱業や林業、運輸交通業界などでの利用が考えらえます。
モビリティでの利用例
リモートのサイトとは、職場全体ではなく、タブレット端末や、スマートフォン、ノートPCの場合もあります。多くのモバイルアプリケーションは、端末上にデータベースは必要ありません。そしてデータ同期のアーキテクチャーが必要なケースは、さらに少ないでしょう。しかしながら、従業員の一日をドライブするキーとなるアプリケーションには、データベースが必要になります。例えば、鉄道の検査のアプリケーション(資産管理)や、一般消費者向け商材の DSD サービス (direct store delivery service) 、あるいは小売業の在庫管理アプリケーションや、業界特化型の CRM アプリケーションなどです。
モノのインターネット(Internet of Things : IoT)利用例
サテライトサーバーやモビリティーの利用例のように、全ての IoT ソリューションで RDSync が必要になるわけではありません。しかしながら、必要になるアプリケーションが存在します。SQL Anywhere は、「IoT ゲートウェイ」上でも稼働します。つまり、Raspberry Pi やその他産業用に設計された安価なシングルボードコンピューターが搭載されたボックスなどです。これは、ローパワーの無線や Bluetooth のネットワーク越しにセンサーからのデータを収集し、HANA での分析にリレーすることができます。IoT アプリケーションのセットによっては、IoT ゲートウェイで重要なコンピューター処理を実行し、構造データが利用できるようにすることで、データ同期のソリューションが意味を持ってきます。最近携わった事例では、IoT ゲートウェイ上で、テーブル数が 50もあるデータベースを稼働させました。データ収集は、ほとんど全て単一のテーブルに対して行われましたが、価値のあるメタデータが他のテーブルで提供され、IoT ゲートウェイ上でスマートなアプリケーションの稼働を可能にしました。
ここで、共通のスレッドがあります。
コンピューティングの展開・配備のメインストリームは、クラウドベースかもしれません。しかしながら、ネットワークのエッジにおいても信頼性が高く可用性の高いデータが利用可能であることによって、企業の新たな領域へのビジネスプロセスの拡張に役立つ、この価値あるニッチ市場を無視することはできません。
How it works - これはどう機能するのか
このブログは、ソリューションの構築方法を説明する詳細製品マニュアルのページではありません (詳細については
http://help.sap.com/hana_options_replication を参照してください)。しかしながら、データ同期がどのように機能するのか、ここで簡単に説明しておきたいと思います。
それぞれの SQL Anywhere リモートデータベースには、ビルドインのデータ同期クライアントがあり、リモートデータベースに対して行われた変更をピックアップすることができます。そして、パブリックのネットワーク経由で RDSync サーバーとコミュニケーションをとります。同期クライアントは、定期的にセッションを開始します。同期クライアントは、その後、変更をアップロードし、Acknowledge を受け取り、再デリバリーされることがないようにします。そして、SAP HANA からの変更を集めまとめます。このプロトコルは、プロプラエタリで、TCP/IP や HTTP プロトコル越しで機能する高速なコミュニケーションメカニズムです。また、ネットワークセキュリティオプションのメリットをフルに享受することができます。
同期サーバーは、それ自体には重要なデータストレージを持っていません。アプリケーションの全てのメタデータは、SAP HANA 内の特別なスキーマに格納されます。
このサーバーは、イベントベースのモデルを実装しています。それぞれの同期リクエストは、複数のイベントに対して発火され(例えば、それぞれのテーブルのアップロードデータを扱うイベントなど)、同期サーバーは、それぞれのイベントに対して「同期スクリプト」と呼ばれるものを実行します。これらのスクリプトを提供するかどうかは開発者に依存します。
同期スクリプトは、HANA SQL Script で書かれることもあり、また単一のSQL 文のように小さいこともあります(例えば、“upload_insert”のイベントでは、スクリプトは、単一のINSERT 文かもしれません)。
また、同期スクリプトは、それぞれのリモートデータベースが異なるデータセットをもつ可能性があるため、同期クライアントからくるビルトインのパラメーターのメリットを享受することができます。
60 を超える異なるイベントのフレームワークによって、大規模なカスタマイズも可能なため、RDSync は、要求事項の多いアプリケーションを扱うことも可能です。単一のサーバーで、一つのアプリケーションの複数のバージョン、さらには複数のアプリケーションも扱うことができます。
成熟したテクノロジーをベースに構築されているため、RDSync は先進の機能セットが提供されています。トランザクションインテグリティを保証するとともに、実績により証明されたパフォーマンスとスケーラビリティーを実現する設計になっています。さらに、ネットワークごしのコミュニケーションとリモートサイト上のデータに対してend-to-end の暗号化を実行できます。包括的なロギングとエラーハンドリングオプションがあり、幅広いエンタープライズ認証システムと統合することも可能です。
(この最初のリリースでは、開発期間への支援は制限されており、最も使いやすいテクノロジーにはなっていません。RDSync が提供する強力な能力を最大限発揮するには、投資と学習の時間が必要です。)
SAP HANA integration - SAP HANA との統合
RDSync で新しいのは、HANA プラットフォームへの同期テクノロジーの統合という点です。自身で管理しなければならない別のサーバーとしてではなく、RDSync は、HANA の機能の中に統合されています。
- インストールからシステムの名前の変更やアップグレード、あるいは一つのホストから別のホストへの移行などのライフサイクル管理は全て、SAP HANA ライフサイクル管理ツールを利用して実行できます。
- SAP HANA ネームサーバーユーティリティーは、設定のシングルポイントとして機能し、自動スタートサービスやRDSync を実行しているホストが利用できなくなった場合の高可用性も提供します。
- HANA Cockpit と HANA Studio への統合により、HANA ランドスケープを管理する幅広いピクチャーの一部として、システム設定やモニタリングを確実に実行することが可能です。
- オペレーション上の使いやすさを目的として、ポートの割り当て、モニタリング機能、ライセンス契約、そしてメタデータスキーマなど、全てがインストール時に、システマティックに、信頼できる形で、SAP のプラクティスにフィットする方法で作成されます。
まとめると、SPS10、SAP HANA remote data sync は、最初のリリースです。しかしながら、コアとなる機能は、成熟しており、証明されたものです。SAP のお客様は、HANA プラットフォームとの統合により、オペレーション上の一貫性において新しいレベルを享受することができます。
How to buy it - どうやって買うのか
SAP HANA remote data sync は、SAP HANA リアルタイムレプリケーションバンドルの中の一部です。これには、SAP Replication Server や SAP Landscape Transformation も含まれています。
RDSync を使用するお客様は、リモートのサイトで使用する SAP SQL Anywhere については、別途ライセンスを購入する必要があります。
ソフトウェアについては、他のSAP ソフトウェアと同様に SAP Service Marketplace から入手することができます。SAP Software Download センターの、H の文字の下にある HANA をご確認ください。
サポートの問題は、アプリケーションコンポーネントヒエラルキーコード HAN-SYNでお問い合わせください。コンポーネントのモニタリングについては HAN-CPT-SYN で問い合わせてください。
詳細については、
http://help.sap.com/hana_options_rdsync に掲載されているマニュアルを参照してください。
SQL Anywhere のマニュアルについては、
http://dcx.sap.com を参照してください(日本語マニュアルもあります)。
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SAP SQL Anywhere に関する詳細情報は、<英語> を参照してください。
上記のコミュニティーに掲載されている技術情報は、順次
SQL Anywhere 日本語コミュニティ
に掲載しています。
SQL Anywhere に関してはまずは
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